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2019年02月04日

日本の声楽家はどうやって食べていってるの?

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今日は日本の声楽家がどうやって食べているのかという厳しい現実の話と、そこから抜け出すためのアドバイスを書きます。

日本では毎年1000人以上の声楽家(クラシック音楽の歌手)の卵が音大を卒業します。

そのうち2年ぐらいでやめてしまう人も多いみたいですが、
音大を卒業してから歌の活動を10年以上続けている人は数万人はいると思います。

そのうちプロのソリストとして華々しく演奏だけで生活できる人というのは残念ながら0.01%ぐらいでしょう。

では残りの99.99%の人たちはどうやって生活しているかというと、
●プロの合唱団に所属。
●教員免許を使って、学校で音楽を教える。
●音楽教室を開いたり、個人レッスンで教える。
●合唱団の指導者・ボイストレーナー・指揮者

をやっている人は、まだ専門性を活かせるから恵まれている方で、

●別のやりたい事や才能を生かしつつ演奏活動をしている

という二足のわらじ型の人もまだいい方で、

●普段はバイトか派遣社員として雇われ、休みの日に演奏活動

という人が圧倒的に多くて、最近もどんどん増えているようです。

だいたいフリーランスでやっている人が多いので、そこで稼いだお金は生活のため、というだけでなく演奏活動の経費としても使われます。
レッスン代、コンクール代、楽譜やCD代、語学の勉強、コンサート経費(チラシ広告費、リハーサルを含めの会場費、伴奏者へのお礼、衣装代など)、健康管理、、、

音大授業料や海外留学費などの(親からの)投資も含めると、まあ声楽のお金のかかること。
それを回収できる人はとっても少ないという現状、、、
歌劇団のオペラで役がついても、ノルマが大量にあったり、練習が大変な割にはギャラが少なかったりということもよく聞きます。

このように、日本で声楽家として食べていくのがいかに厳しいかという現実が何十年と未解決のままあります、、、。

この椅子取りゲームから抜けようと本気で思えるようになったのは、30代後半にさしかかってからでした、、、。

例にもれず、私もほんの10年前までは、平日は音楽の高校非常勤講師とバイトを3つぐらいかけもちながら、いつか大学の先生にでもなれたらラッキーということを夢見てひたすら厳しい現実を生きていました。

私は京都芸大の大学院を出て、途中リタイアしたけれど博士課程にまで進学して、そこまで名の知れたものではないけれどコンクールでも2回優勝して、ドイツで受けた歌曲の講習会では優秀な生徒ということで最後にコンサートで歌わせてもらって、リサイタルでは名の知れたベテランミュージシャンに共演してもらって、、と、おそらく日本の演奏家ピラミッドの中では比較的上の方にいたと思います。

が、生活はカツカツ、自転車操業でした、、、。
バイトをやってもやっても、生活費だけでなく、さきほども書いたように、声楽のレッスンを受け、外国の講習会に行き、論文の資料を買い、語学(独語、仏語、伊語)の勉強をし、新しい楽譜を買い、勉強になるからとそこまで好きではない有名アーティストのコンサートに行き、先生や友人のお義理のコンサートにも行き、次のコンサートのための衣装を新調し、学生ローン(大学院の時の)の支払いし、、、とお金は出ていくばかり。貯金など一円もできない状態でした。

今考えたら、それが必要だと思っていたのは、その“椅子取りゲーム”の椅子に座ることしか目に見えてなかったからなのですが。

わたし、この「日本で演奏家として食べていくための椅子取りゲーム」のやり方をみんなやめたらいいと本気で、本気で思いますよ。
椅子取りゲームにエネルギーを注がれて、音楽をする本当の楽しさや喜びを見失ってしまいます。

椅子に座れたとしても、次から次に育ってくる才能のある若手にいつ奪われるのかと常に不安でいなくてはならないし、
自分があの椅子に座れないのは、自分がダメだからだ、、と何かとネガティブ・コンプレックスを持ってしまうし、
椅子に座れたら座れたで、優越感や執着を持ってしまうし、
仲間も、どこかで椅子取りゲームのライバルだという感覚が抜けないし、
精進するためにという名目で出ていくお金のほとんどが、椅子取りゲームの有利になるようにという隠れた目的のためだったりするし、
そういう不安や焦りや劣等感、楽しめないなどの状態でいい演奏ができるわけないし、、、。

じゃあどうやって歌うことで生活していったらいいの?

その答えはずばり、椅子取りゲームをやめて、ゲームの外に新しい椅子を作ることです。
その椅子はあなただけのものなので、誰にも取られることはありません。

アニソンばかり唄うバリトン歌手がいてもいいじゃないですか。
一人で「フィガロの結婚」の全役をするオペラ歌手とか。
いつも自分で伴奏弾いて練習している人なら、リサイタルは全部弾き語りでする、とか。
ファッションに興味がある人なら、ファッションショー的なリサイタルをするとか。
モノマネが好きなら、海外の有名オペラ歌手のモノマネ専門になるとか。

要は、自分の好きなこと・得意なこと×歌うこと、の組み合わせでオリジナルのジャンル・職種・仕事を創る。
そして、それをとことん追求していく。

例えばわたしの場合だと、東洋思想や統合医療の考え方、心理学、最新物理学×ボイストレーニングで「ボイスエンライトメント」という新しいジャンルが生れました。

それで、ヒーリングボイスの出し方がわかったから、歌うこと×ヒーリングをやっている。

もしくは、ひとつの職業にこだわらない生き方もこれからの時代は大事だと思う

歌手の人でもいろいろな人を見ていると、兼先生だけじゃなくて、兼お百姓、兼モデル、兼整体師、兼税理コンサルタント、兼カフェ経営とか、ダブルキャリアでやっている人の方が、視野が広く、心に余裕があり、充足感があり、演奏の仕事も、他の仕事も、人生もうまく回っている人が多いように思います。
(それか、藤村美穂子さんぐらいストイックにやるか、、、)

私は歌手であり、歌唱指導者・ボイストレーナーであり、心理カウンセラー&セラピストであり、情報発信者でもあります。
いろんなことをしていたらエネルギーが分散してしまう、、と思いきや、
これらがすべて掛け算されていくので、それぞれの提供するものの価値がより上がっていくのがわかるし、それが自分の人生に還元されるのもわかるのです。

そんなふうに演奏家ピラミッド・椅子取りゲームから抜けてみたら、クラシックのコンサートも滅多に行かなくなったし、CDや楽譜なんてここ10年ぐらい買ってないし、衣装も以前買っていたような10万円もするステージドレスなどを着て歌うことがなくなったし(メルカリで売ったw)、レッスンも受けなくなったし、語学の勉強もまったくやっていない(やっても英会話ぐらい)。

けれど、下手くそになったかといえば、むしろ歌はうまくなってるし、教える内容のクオリティもあがったと思います。
何よりも、歌うこと、教えることが楽しくてしかたがない!!!(15年前の自分に教えてあげたい、、、)
あと、クラシック至上主義みたいなのも取れたので、何でも歌えるようになりました。

それは、人生(日々の生活)の質が上がったことと関係があります。
人生(日々の生活)の中に、演奏があり、仕事があるわけだから、当たりまえですよね。

でも、意外とこの視点が抜けている人が多いんですよ。

演奏がよりよくなったら、仕事がよりよくなったら、人生の質が上がる、だから努力する(=人生が犠牲になっている)、みたいになっていますが、
実は反対。

人生が質が上がったから、演奏の質が上がる。
人生がよくなったから、仕事もよくなる。

だから、どうせ努力するなら何よりも人生の質を上げることに努力してほしいのです。
「人生の質を上げる」ための情報は、こちらのブログで発信していますので、ぜひ覗いてくださいね!
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