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2019年02月19日

結婚式で歌うバイトについて

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声楽家が日本で演奏活動だけで食べていくのはなかなか大変、という前回の記事の続きのような内容になります。

そんな声楽家たちのバイトで人気があるのが、ブライダルで歌う仕事です。
他のバイトに比べるとちょっとでも専門性を活かせるということもあり、私も大学卒業してからつい最近まで(途中5年ぐらいやめたりもしてましたが)続けていました。

でも、みんな、そこでキャリアを生かすのにものすごく満足しているかというと、そうでもない、むしろ不満に思っているというのが本音ではないかと思います。
ぶっちゃけ、生活のためにやっている人がほとんどです。
もちろんそんなことを口にすることはないですが、そういう空気感があります。

ブライダルで歌うお仕事、「聖歌隊」ともいいますが、
多くの場合、派遣音楽事務所に所属し、そこから毎週末いろんなホテルや式場へと歌いにいきます。

クラシックの歌手の場合、披露宴で歌うという仕事はほとんどなくて、多くはチャペルでの式で1人~4名ぐらいで歌います。
事務所によりますが(私は過去7つぐらいの事務所から仕事をいただいていました)、相場はだいたい1挙式につき3000~5000円です。
仕事は、挙式で歌うだけでなく、多くの場合アテンダーといわれる新郎新婦の式中の身の回りのお世話やご親族・ゲストの接客をするスタッフも兼任します。
1挙式で歌う曲数は、入退場の曲と聖歌合わせて4,5曲。
会場の入り時間はだいたい挙式の1時間~1時間半前で、リハーサルと本式の時間合わせて1時間ぐらい。

私が大学卒業してすぐの頃は、一つのホテルや式場での一日の挙式数平均7,8件というのが普通でしたが、
昨今は結婚する人が減ったのか、“地味婚”とか“ナシ婚”とかのスタイルが多くなってきたのも関係があるのか、一日1件、多くて3件ぐらいという式場がざらです。

レストラン挙式というのも増えてきていて、そういう会場は1日1件か2件がマックスだったりします。

土日合わせて2件だけということも少なくなく、1件4000円ですと、2日で8000円、
交通費や食費は実費ということも結構あるし、オフシーズンは仕事が入らない日もよくあるしで、他のバイトする方がよほど割りがいいんじゃないかというのが現状です。

あと、これも式場や事務所にもよるのですが、聖歌隊も、音大大学院を出ていたり、留学経験があったり、歌劇団で主役を歌うような実力のある歌手もいるかと思えば、音大の現役学生、普段プロとしての演奏活動をしていないけど讃美歌ぐらいなら歌えますという音大出身の主婦、音大出てないけど歌うの大好きという人など、実力もキャリアも様々なのですが、ギャラや仕事の内容は基本統一されていました(わたしも大学出た時とキャリアを積んだ15年後とギャラは変わりませんでした。件数は激減したけれど、、、)。

「なんで私がいつまでもこんなところで歌わないといけないの?」の人にとっては、今までの莫大な投資を考えたらよほど好きでなければ割の合わない仕事だと感じてしまうし、
「え、こんな私が歌でお金をもらっちゃっていいの?」の人にとっては、簡単な讃美歌などを毎度4,5曲歌って、ちょっと接客するだけでこんなにもらえるなんてラッキーという感じでしょう。

もちろん、なかにはこの仕事が大好きで、「人生で一番幸せな瞬間に立ち会えてなんて幸せなんだろう」って本気でうるうる毎回感動していたり、「世界一のブライダルシンガーになる!」っていう情熱や誇りを持ってやっている奇特な人もいるかもしれません(少なくともわたしは会ったことないけれど、、)。

が、少なくとも私や一緒にやっていた人たちは、見ず知らずの人の結婚式に何万回と立ち会い、同じ歌を何千回も歌っているうちにルーティーンワーク化していき、接客笑顔で、毎回「ミスなくとにかく無難に責任を果たすこと」が目標となっているような感じでした。

他のコンサートだったら、ちょっとでもいいコンディションで臨もうとそれなりに気を使ってましたが、「明日はブライダルだから早く寝よう」とか、「お酒は控えよう」とか、残念ながらそんなことを考えて聖歌隊の仕事に臨んでいたのは最初の2,3年だけでした、、、。

多くのブライダルカップルにとっては一生に一度の特別なイベントなのに、なぜそんなルーティンワークになってしまうのかといえば、
一つは、このブライダルの業界も、「交流」よりも「形」や「枠」が大事な世の中のしくみ(資本主義)にぴったりと寄り添っているような感じがあり、そのシステムの中で演奏家もAI化しているところがあったからかもしれません。

例えばコンサートなら、お客さんは「この人のこの歌を聞きたい!」というので聞きに来て下さいます。

が、ブライダルの仕事は、お客さん(新郎新婦)にとって歌手は、「聖歌隊その1」、「聖歌隊その2」、でしかなく、挙式パックの一部でしかなく、教会式の雰囲気の背景の一部でしかなく、、、
多くの場合、当日初めて会う聖歌隊の人がどんな人で、どんな歌が得意なのか、どんな声なのか、何を歌ってくれるのか、そんなことは一切知らないし、あまり期待もしていないし、フィードバックも特にないのです。

そうなると、「そっちがそれでいいなら、こっちもこれでいいよね」
って、悲しいけれどなってしまうのです、人間て。

普段は「聖歌隊その1」でしかない私でしたが、
一度こんなことがありました。

私が所属していた派遣事務所に、とある結婚式場のプランナーから「新郎新婦が、入場の時にこの曲をこんなイメージで歌ってもらいたいそうです」と新郎新婦の提出したYouTubeの動画を送ってきたそうです。
その時の動画はこちら↓

事務所のスタッフが動画を見たら、偶然にも歌ってるのが私宍倉だということが発覚。
親戚の結婚式で歌った時の映像をアップしていたものでした。
事務所から「宍倉さん、お願いしますね。当日の式で歌う歌手が、希望のイメージの本人だったら彼らの意に叶うので」と言われ、私が担当することになりました。

聖歌隊その1から→「入場シーンはこの歌のこのイメージで歌ってもらいたい」という新郎新婦の思いを受け取っての演奏だったので、
その時の式はいつも以上に緊張しましたが(笑)、
それまでにはあまり感じたことがなかった、「交流」を感じることができました。

友人や親せきの結婚式に参加するときにも、「歌ってほしい」と頼まれることがあります。
たぶん20回ぐらい結婚式や披露宴で歌わせてもらいました。

当たり前ですが、普段から交流している人の結婚式で、「あなたに歌ってほしい」と頼まれて歌うのは、バイトで歌うのとは全然違います。

そこまではいかないまでも、ブライダルシンガーとして仕事で歌うときも、
もう少し、歌ってくれるなら誰でもいい、ぶっちゃけボーカロイドでもいいやん、みたいな感じがなんとかならないかなーと思ったりします。

ただでさえ、これから世の中はAI(人工知能)の発達で、世の中の50%の仕事がなくなると言われています。

実際、わたしが聖歌隊やっていた時も、「演奏者あり・なし」が選べて、「なし」の場合は、讃美歌の時にCDを流す、というパターンも増えていき、「このままじゃ聖歌隊いらなくなるね、、」と仲間とさみしく語り合ったりしていました。

だ・か・ら。
これから私たちは、「人間にしか与えられない価値」を見いだしていかなくてはならないのです。

人間の生の声(開いた体とハートから出る)にはものすごく価値があります。
CDやボーカロイドには絶対に出せない高次元の響き(愛や癒し、祈りの波動)を、人間の生の声は含むことができるのです。

というか、人間の声に含まれている情報量って、半端ないんです。
その人の人生やその奥の背景(人生を越えたDNA情報)すべてが含まれているのです。
それが耳で聞こえるわけではないけれど、細胞は聞いています。

だからこそ、人の魂や心の深い部分に働きかける力が、私たちの声にはあるのです。

人間の声で、結婚セレモニーという愛と喜びと至福に満ちた空間を、さらに祝福や愛の響きで満たすことができたら素敵じゃありませんか。

ということで、
私が今後やってみたいことは、
これまでの派遣音楽事務所のように、
結婚式やその人にとって大事なイベント、パーティーなどに演奏家を依頼するときに、
その日にたまたま身体が空いていて、会場から近いところに住んでいる演奏者1が演奏しにいく、というのではなくて、

依頼者が、「この人に演奏してもらいたい!」という思いから選んでもらった演奏者が、奏でる音楽によって思いを届けにいく。

演奏する人と聞く人だけでなく、その場も、空気も、そこにあるものすべてがその響きを共有できるように、
もっともっと、音楽と人と心が一体になるように。

そのためのしくみ(演奏者と生演奏を必要としている人のマッチングサイト)と人材教育。

インプットしたものを器用にアウトプットできる歌手ではなく、
オープンマインドで魂の感性と個性を声に乗せられる歌手を育てたい。←もちろん、ボイスエンライトメントのメソッドで!

わたしは今やりたいことが山のようにあるのですが、
その中でも、このしくみづくりのことはずーっとずーっと考えを練っているところがあります。

今後、ブライダル産業がどう生き残っていくかはわかりませんが、、、
どんな分野であっても、
「人間にしか与えられない価値」を見出して、
それを活用できるような仕事しかこれからの時代は生き残れないよ、ということははっきりとわかっています。

もし、今日書いたようなしくみや、演奏者育成に興味がある方がいらっしゃれば、
ぜひご連絡ください!

一人ではできないので、智慧を出し合って創っていきましょう♪

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